債券投資の注意点

退職金などある程度まとまった資金を一括投資し、取崩しながら運用を継続することで資産寿命を延ばすことが期待できます。

今年は金利も上昇したことで債券投資を検討している人もいるかもしれません。このコラムでは債券投資(個別債券の購入)をする場合の注意点について整理します。

債券投資の注意点

信用リスク管理はできるのか?

債券投資では、投資先の企業が破綻しなければ毎年決まった利息が支払われ、満期には元本が返ってきます。例えば、4%、償還期限10年の米ドル債を10万ドル購入した場合、毎年4000ドル(10万ドル×4%)の利息が支払われ、10年後には10万ドルが返ってきます。

ただし期間内に投資先の企業が破綻した場合には条件が大きく変わります(場合によっては全く返ってこないこともある)。破綻しそうになったら事前に売却すればよいのですが、企業が破綻するかどうかを事前に察知することは困難です。

当事者である企業は最後まで「大丈夫だ」と言うでしょうし、破綻するときは決算書を通りいっぺん見てもわからないこと(過度の不良債権や違法な取引、など)が原因になることが多いのではないでしょうか?それらを個人投資家がチェックするのは不可能ですし、販売した証券会社も個人客には個別債券の信用リスクをチェック・報告をすることはあまりありません。​

信用リスクに疑念が生じたら流動性がなくなる懸念

老後資金の場合、健康状態やライププランの変化によりある時期まとまった資金の取崩が必要になるかもしれません。ところがたまたまその時期、保有している債券の発行企業が「もしかしたら危ないのでは?」というような状況になってしまうと、危ないと思われている企業の債券を買いたいと思う人はいなくなるので、破綻していなくても売却が困難になる、または売却できたとしても大きく売りたたかれることになります。

上場株式の場合は徐々に値下がりしたり大きく値下がりするとニュースになるので値下がりが目に見えますが、債券の場合は満期まで持てば元本が償還されることから途中の値動きを見ることはあまりありません。ある日突然売れなくなる、大幅にディスカウントしなければ売れなくなる、ということになる可能性もあります。

償還管理、再運用の手間、条件

償還(満期)時に使う予定がある資金なら良いですが、使う予定がなければ償還になった資金で次の債券を購入することになります。その時の金利水準が高ければよいですが、低い場合だと、次に購入する債券の期間ずっと低い金利で固定することになります。

早期償還しない場合もある

利回りが高い劣後債などを検討する場合もあるかもしれません。

劣後債は、破綻時の返済順位が低いのでその分金利が高い債券のことです。

償還までの期間は30年とか35年とか超長期ですが、早期償還されることがある、という条件になっています。ただし早期償還を決めるのは発行企業で、必ず早期償還されるわけではありません。「早期償還しないと次の発行がしづらくなりますから・・・」といったことが言われますが、最近では早期償還しないケースも出てきています。資金の借り換えにメリットがあれば(金利が下がり企業の利子負担が少なくなるなら)早期償還して再度債券発行、反対に金利が上がり借り換えにデメリットがでるようなら早期償還せずにそのまま、と考えるのが合理的です。

つまり、早期償還になったらその資金を再運用する場合の条件は悪くなり、より高い金利で運用できる場合には低い金利で継続、となります。

以上から、万一売りにくくなった時でも他の資産から必要な資金を準備できる投資家以外は個別債券投資には慎重になった方が良いでしょう。