テーマ株ファンドの購入は慎重に!
本コラムでは実在の商品を例に解説していますがその商品の良し悪しを評価するものではなく、テーマ株ファンドの特徴と投資する場合の注意点を理解するためのものであることをご理解の上お読みください。
テーマ株ファンドは、特定の業種やテーマに特化して投資を行うファンドであり、そのテーマの株式が市場で注目されると短期間で大きな値上がりを期待することもできます。しかしながら当社では原則テーマ型ファンドの購入は慎重に検討するようお伝えしています。
このコラムではテーマ株ファンドの購入は慎重にしたほうが良いと考える理由を整理します。
テーマ株ファンドは、特定の業種やテーマに特化した投資ができることが大きな特徴です。最近ではAIとか宇宙とか自動車の電動化、半導体、などが株式市場のテーマとして注目されていますが、関連する多くの企業から個別の銘柄を自分で選択するのが難しい場合にはテーマ型ファンドも利用価値あるかもしれません。
一方、テーマ株ファンドは特定のテーマに集中投資をするので、そのテーマ全体の不調による影響が大きくなります。またそのテーマそのものが不調に終わってしまう、マーケットの関心がそのテーマから離れてしまう、などで低迷が長く続いた場合、投資を継続するべきか見切るべきかの判断を迫られるのが難しい点です。
下図は、1999年11月に設定されたインターネット関連株ファンドの価格推移グラフです。90年代後半はインターネット企業の勃興期でした。ウィンドウズ95が発売されだれでもが簡単にパソコンを使えるようになりました。アマゾンが上場したのもこのころです。
このファンドも設定からわずか4か月で40%以上上昇しましたがその後ITバブルが崩壊、2002年9月には設定時の1/3以下の基準価額3,100円台、高値からはマイナス78%まで下落しました。
その後もリーマンショックなどの影響もあり設定時の基準価額10,000円を回復したのは2013年12月でした。2007年6月にアップルがiPhoneの販売を開始しインターネットが人々の生活に密接にかかわるようになりテクノロジーがテーマとして復活してきたと言ってもよいと思います。
設定時から24年半、保有を継続していた場合約6.3倍に資産は成長しました。一時的な値下がりを受け入れ長期保有したことで報われた、とも言えますが、低迷時に特定のテーマだけに投資をするファンドに落ち着いて投資を継続できる人は少なかったのではないでしょうか?
設定時に500億円程度だった資産残高はリーマンショックの時は20億円台まで減少、値下がり分に加え多くの見切り売りがでたことがわかります。
このファンドの場合は10年以上たってテーマが復活した例ですが、テーマが復活していない、すくなくとも現時点ではマーケットの関心事が離れてしまった例を見てみましょう。
こちらは2007年のエコファンドがブーム、という記事です。環境問題は現在も続く地球的な課題と言ってよいと思いますが株式市場ではいまのところこのテーマはあまり注目されていないようです。見方を変えるとことさら環境に配慮すると宣言しなくても多くの企業が当たりまえのこととして取り組むようになり、環境にこんなに配慮しています、と言ったところで株価が反応しなくなったのかもしれません。
ではこの記事に取り上げられている3つのファンドをみてみましょう。
一つ目は「DWS地球温暖化対策関連株投信」です。このファンドは2007年8月に設定されましたが2017年7月に償還になってしまいました。今は無いファンドなので価格推移などは見つけることができませんでしたが、償還直前の純資産はわずか2.7億円ほどだったようです。
二つ目は「UBS地球温暖化対応関連株ファンド・クールアース」です。こちらも2007年8月の設定、現在も存在しています。当該ファンドの2024年4月のマンスリーレポートを見ると設定後3か月で16%程度上昇しましたがその後は低迷を続け基準価額が1万円を回復したのは13年8か月後の2021年4月でした。
ほぼ同じ時期に設定された当社推奨の「ファンドB」は2021年4月には約2倍になっていたのと比べると長期の低迷を我慢したことに見合うリターンを得られているとは言えないと感じます。
またレポートの2ページに組み入れ銘柄と組入れ理由が記載されていますが、組み入れ理由を読むと環境配慮がとってつけたような理由に感じる人も多いのではないでしょうか?
最後に1999年8月に設定された「エコファンド」を見てみましょう。2024年4月のマンスリーレポートをみると、設定後短期間は上昇、その後は長い低迷、設定時の基準価額1万円を回復するのに長期間かかる、という他のテーマ株ファンドと同様の傾向があると感じる方もいるのではないでしょうか?
待てば何とかなると確信が持てればよいのですが特定のテーマに特化しているとそれも難しいというのがこれらの例からもわかります。
さらに言うと、世界の企業から特定の業種やテーマにとらわれずに成長が期待できるか会社に投資をしていれば取り上げられているテーマに関連する会社も入ってくるでしょうし、そもそも投資先の企業が社会の課題や技術や産業の方向性を考えて自らの事業に取り組んでいるはずなのでテーマの成長の恩恵を取り逃すことはないと考えてよいでしょう。
特に今はAIや半導体などが大きな話題になっていて、これらは今後も続くテーマだと思いますがこのような理由から安心して投資を継続するためには特定のテーマに集中投資するテーマ型ファンドへの投資は慎重にして特定の業種やテーマにかかわらず成長が見込める企業に投資するファンドを利用するのが長期投資で成果を得るためには大切だと考えています。