債券は組合せ無くてよいのですか?
株式だけでなく債券も組み合わせたほうが安定的な運用ができる、特に高齢になりまとまった資金を運用する場合はその必要性が高い、と聞くことも多いと思います。
当社では原則、十分に長い投資期間が取れる場合(長期の取崩運用含む)、債券など他のアセットクラスを組み合わせることはしません。このコラムでは何故そのようにしているのかを整理します。
下図は2008年1月から2024年9月までの以下の値動きの推移を表しています。
青:日本株式100%
株式は値動きは大きいが値上がりも大きい、債券は値動きは小さいが値上がりも小さい、という特徴があることがわかります。組合せをすることにより値動きの大きさも値上がりも組合せ比率に応じた特徴に変わります。
2008年は9月にリーマンショックが起こったため2013年まで元本割れが続きました。このような時期は債券を含めた分散投資(赤)は株式(青・グレー)に比べて値下がりが少なかったことがわかります。一方、上昇局面ではリターンが低い債券が足を引っ張り株式単体に比べ上昇も穏やかだったことがわかります。
つまり投資の目的が下落時の値下がりを押さえることなのか長期的に大きな値上がりを期待したいのかによって債券を組み合わせるかどうかが変わってくるということになると思います。
理屈は分かるがやはり大きな値下がりは避けたい、と考える人もいるかもしれません。その場合は債券を組み合わせるのではなく株式への投資額を少なくすることも一つの選択肢です。
下図は以下の値動きを比較したものです。
赤:日本株式25%、日本債券25%、外国株式25%、外国債券25%
緑:日本株式50%、外国株式50%
紺:日本株式30%、外国株式30%、現金40%
*現金は金利0%で計算
4分割均等と株式と現金の組合せは、ほぼグラフが重なっていることがわかります。債券も含めて投資をする場合と株式と現金の組合せそれぞれのメリット・デメリットは以下のようなことが考えられます。
4分割均等のメリット
・債券価格が上昇し預金とのリターンの差が大きくなる場合
・大きく円安になり外国債券のリターンが大きくなる場合
・株式下落時に債券価格が上昇しポートフォリオの値下がりが抑えられる場合
4分割均等のデメリット
・株価下落時に債券価格が上昇しない場合
・円高になり外国債券の円建てリターンがマイナスになる場合
・リバランスに時間とコスト(税金)がかかること
- 値上がり(または値下がりしていない)債券を解約し大きく値下がりした株式を購入するような場合、乗換は同日できない。また債券が値上がりしていれば課税もある
株式+現金のメリット
・預金なので金利の上昇や為替の変動があっても元本割れはない
・機動的に動ける
- 株式値下がり時に買い増しをする場合もスムーズに対応可能
株式+現金のデメリット
・債券のリターンが預金より大きく得られる場合
・円安により外国債券のリターンが上がる場合
また株式と外国債券が期待通り反対方向に動くとは限らないことも留意が必要です。リーマンショックの時は株安と円高(債券金利は低下)、一昨年のインフレ時には株安と金利上昇(円安)になり外国債券を解約して安くなった株式を購入することは現実的には困難でした。
このように考えると、特に今の日本のように円建て債券の金利が低い場合には値動きを押さえるために債券を組み合わせるのではなく、株式投資で値動きを受け入れること、値動きを押さえたい場合には株式の投資額をコントロールすることが長期的な資産形成、資産寿命を延ばすためには有効だと考えています。
そのためには投資可能期間を明確にすること、株式の値動きがなぜ起こるのかを理解すること、株式は長期的に値上がりが期待できる理由を理解することが、日々の値動きの予想をすることよりも大切であると考えています。